大阪府議会令和3年度(2021年度)9月定例会、10月11日採決分における、民主ネット大阪府議会議員団採決態度について
大阪府議会令和3年度(2021年度)9月定例会、10月11日採決分における、
民主ネット大阪府議会議員団採決態度について
民主ネット大阪府議会議員団 代表 野々上愛
民主ネット大阪府議会議員団 幹事長 山田健太
9月29日から始まった府議会9月定例会は、衆議院解散総選挙の日程が今月末に確定的となったことから、議会日程の大幅な省略、採決の前倒しとなった。
国政選挙は重要であるが、同様に自治体議会も重要である。ましてやコロナ禍である。3550億円を超える大型補正予算が、委員会審議を経ずに採決されることは極めて異例であり、避けるべき事態であった。この秋冬の新型コロナ対策はもとより、大阪の経済、暮らしの再生に向け、より慎重に審議されるべき予算であったことを指摘したい。その上で主だった議案への態度とその理由について以下の通り述べる。
1号議案 令和3年度一般会計補正予算(第7号) 【賛成】
今回の補正予算は、医療体制の充実や、我が会派として要望を続けてきた公共交通事業者への支援(10億2120万円)や、新型コロナ感染症の拡大により大きな影響を受けている幅広い業種の中小法人等への支援(111億4057万円)などが計上され、長引くコロナ禍に対応する必要な予算が多く盛り込まれている。
一方、感染収束後を見越した観光関連事業者への支援事業(69億3000万円)では、昨年のGoToトラベルの二の轍を踏まないよう、感染収束をどう定義するか、また経済活動を再開するにあたっての幅広い検査体制の確立など、課題が多く残る。
また、緊急事態宣言の全面解除に伴い、飲食店のゴールドステッカー認証作業が急がれるが、本日現在でも8000件を超える飲食店が申請中のままであり、アルコールの提供の有無など不利益が生じている。これら課題が整理されないままの予算執行については大きな不安が残る。
昨年度の大阪府政は相次ぐ専決処分により、予算審議の機会が著しく奪われたが、今年は政治日程により、やはり予算審議が形骸化することがあってはならない。
第31号 大阪府国土利用計画審議会条例一部改正 【賛成】
本条例改正は大阪府国土利用計画審議会条例に「大阪府国土利用計画審議会の権限に属する事項で、規則で定めるものについては、会長において、これを専決することができることとする。」と新たな条項を追加するものである。審議会会長が専決を行うことのできる対象については、後日規則を改定すると部局より聞いており、その趣旨は、審議会で取り扱われる案件が報告案件のみの場合、会議の招集を割愛し書面による報告とするためであると聞いている。しかし、本条例改正は「規則で定めるもの」によっては専決の対象が本条例改正趣旨を逸脱して拡大し得る。そのため、本来審議会に付されるべき案件において、審議が省略され会長の専決とされることがないように運用にあたっては、慎重に対応されるよう求める。
決議1号 北朝鮮による日本人拉致問題に対する理解を深めるための取組みを推進する決議 【採決に加わらず】
朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)による拉致問題は、重大な人権侵害問題であり、他の深刻な人権問題同様、国際社会が最優先で取り組むべき課題の一つである。日本政府が、実態調査のみならず、広く内外にこの問題を周知し、支援の輪を喚起する努力を行うべきであり、地方自治体も大いに協力すべきである。
一方で、特定の作品や表現を地方自治体の行政や議会が推奨するという形の声明の在り方には疑問が残る。これは、例えば核廃絶への国際的努力の一端を地方自治体が担うべきなのは自明であるとして、核の問題を扱った特定の作品を自治体が推奨すべきか、ということと同じ問題である。一般に「表現」にはそれぞれの作家性、つまり自分たちの感じたことやメッセージを強調するための表現の工夫が行われる。同じ問題を扱っていても、作家によって異なる印象を与える異なる作品になる。したがって、自治体は様々な表現によって多様性を維持することが重要であり、教育現場で何を教材として用いるかについて、児童生徒の発達段階や学習に割ける時間などに応じて、何を選定するかの裁量権が与えられるべきであろう。教育現場の自主性を重んじ、政治がこれに安易に介入すべきではないというのが、教育基本法の理念とするところである。このため、特定の作品名をあげ、それらを特別に推奨するかのような声明は、自治体議会が議決する声明として異質であり、これを避けるべきだと考える。
また、国家犯罪とその国の国民・民族とは明確に区別されるべきであるが、残念ながらそこを混同させた差別の問題が世界中に満ち溢れている。こういったことは、この声明では本論ではないとの指摘があるやもしれないが、断片的なメッセージは容易に誤解あるいは誤用されるものであり、十分な注意を払わなければ、メッセージを発したもの自身が容易に差別の加担者、拡散者になってしまう時代である。我々はまず、全ての人々に人権があり、巨大な国家権力の都合は、容易に弱い人々の権利を奪ってしまうものであり、だからこそ厳格な法治主義が必要なのである、ということを確認すべきである。
党派やイデオロギーを超えて一致点を見出すべく調整する時間が、今回の大幅な議会日程の短縮により、奪われてしまったことは誠に残念である。よって採決を行う前提条件が整ったとは言い難く、採決に加わらない判断を下した。
以上